「今、日本には危機意識がないことが問題なのです。今のままだったら、とんでもないことになってしまう、日本は沈没してしまうという危機意識、そうした議論が余りにもない」。ハーバード大帰りで、大蔵省出身の若手・山本幸三代議士は怒気をこめて腹の底から吐き出すかのように、語気を強めた。通産省OBで税財政に精通している部会長の村井仁代議士は、一点空を見つめるかのように両腕を組んで鋭い視線を投げかけて、深くうなずいていた。ここ数年来、危機感の欠如を痛感してきた私は、きつく唇をかみしめ、山本代議士の険しい眼光に視線を投げ続けた。「全く、その通りだ」とうなるようにつぶやき、我が意を得た。「今、わが国には、バブル経済崩壊のあと、危機を見服して進む、国民的合意による日本の目標がない」と念を押すように私は発言した。
国会の朝は早い。一九九四年、秋たけなわの十月十八日、午前八時三十分から新党準備会其本政策委員会の国家理念・総論部会で、さびしく激しく、気魄のこもった持論を開陳し合う、やりとりの中での一コマであった。山本代議士の発言は残響のように私の耳にとどまった。